お墓の歴史墓地の種類と特徴墓地選びのポイントお墓のしくみ墓石を選ぶポイント
埋葬の基礎知識改葬の基礎知識

 
 改葬とは遺骨を別のお墓に移すことです。たとえば住居を移転するとき、墓地が移転する、改宗、継承者が絶えて無縁仏になる、また分骨する場合などに改葬が行われます。改葬は自分勝手に行うことはできません。「墓地、埋葬等に関する法律」に規定される手続きを踏み、自治体の許可を得てから改葬します。改葬するためには、まず現在の墓地へ改葬の事情を説明します。寺院墓地の場合は檀家を失うことにもなるので丁重に相談することが必要でしょう。次に移転先の墓地を確保したら、下記のように手続きします。また、自治体に提出する改葬許可証交付申請書には、故人の死亡時の本籍と住所や氏名、性別、死亡年月日、埋葬の年月日と場所、改葬の理由と場所、名前、申請人の住所、氏名、故人との続柄などを記入します。
 
移転先の墓地に「受入証明書」を発行してもらう(地域によっては除籍抄本が必要)。
現在の墓地に、埋葬を証明する「埋葬証明書」を発行してもらう。
現在の墓地を所轄する自治体に「改葬許可証交付申請書」、「受入証明書」、「埋葬証明書」などを提出して、「改葬許可証」を発行してもらう。
「改葬許可証」を現在の墓地に提示して、遺骨を移転する。
 
 改葬するにあたって、遺骨を移す前に移転前のお墓を「閉眼供養」する必要があります。閉眼供養は「お魂ぬき」とも呼ばれ、一般的には家族中心の法要。墓前で僧侶に閉眼供養の読経をお願いして、焼香します。遺骨を移した古いお墓は、移転先に移すことも可能ですが、運搬中の安全や輸送費が高いなどの問題もあり、多くは新しい墓石を建てることになります。移転しない墓石は、無縁墓石として無縁塚に処分してもらう方法があります。また、改葬によりお墓を移しても、お墓の権利は「使用権」になるので、前の墓地からの返済金はありません。  
 
●土葬のお墓を改葬する場合
 遺体を土葬にした場合、年月を経ていれば遺骨は風化して消滅していることもあります。このようなときは、その場所の土を少し(おわん一杯分)とって遺骨の代わりにして、新しい墓地に移すのが一般的とされています。
 この場合は、遺体や遺骨がないので墓埋法に規定されているような自治体に許可を受ける必要はありません。土葬に限らず、骨つぼに入れずに埋葬した場合にも、遺骨が特定できないという理由からこの方法を用いることがあります。また、遺骨が残っている場合は焼いてもらうこともあるようです。

●遺骨を外国へ改葬する場合
 海外へ永住することになった場合、先祖のお墓は親族にお世話をお願いしても、家族の遺骨は一緒に移住することを望む人は多いはずです。海外へ改葬するときでも、日本国内と同様に、現在の墓地の埋葬証明書と自治体の改葬許可証、遺骨を持って入国先の大使館を訪れ受入証明書を発行してもらいます。その際には、不正な物品を混入させないこと、遺骨の尊厳を傷つけないことを宣誓する必要があります。
 
 お墓の使用権は、管理料を払い続ける限り永久的なものです。この権利は代々子孫に受け継がれていき、お墓を受け継ぐ人を「承継者」と呼びます。民法第八九七条では「系譜・祭具及び墳墓の所有権は・・・慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が、これを承継する。但し、被相続人の指定があるときは、その者が、これを承継する」と規定されています。
  お墓の継承は墓地の永代使用権と墓石などの所有権を受け継ぐことであり、他人に譲渡することはできません。多くの墓地や霊園では正当な相続人(東京都では六親等内の血族、三親等以内の姻族)以外への使用権の譲渡は認められていないようです。
  承継の手続きには名義変更が必要で、故人との関係を示す書類として承継者の戸籍謄本と住民票、故人の除籍謄本などを用意します。また、公営墓地の場合は、お墓の姓と承継者の姓が異なっていると使用権は承継できません。
  女性の場合、婚家の姓のままでは実家のお墓を守ることができなくなってしまうのです。このような時には、婚家の姓を刻んだ新しい墓石を建てる(新しい契約になるので、永代使用料を払うことになります。あるいは継続とみなされることもあるので確認が必要)、永代供養墓にするなどの方法があります。
 
 承継者が途絶えたり、海外へ移住したりと供養ができなくなる場合には、菩提寺に永代供養を依頼します。永代供養とは、菩提寺が特定の故人や先祖代々を永代に渡り供養することを意味し、永代供養料が必要です。また、檀家信徒以外でも永代供養の生前予約を受け付ける寺院墓地も増えてきていますが、寺院の永代供養には期限が決められていることもあるので、注意が必要です。
  公営、民営の霊園では、一般に永代供養を受け付けていません。最近では、承継者がいなくても永久に供養してくれる共同型合同葬墓、つまり永代供養墓が各地に登場しています。これは慰霊碑や供養塔などのある共同納骨堂のような形式ですが、納骨の方法は全部の遺骨が合葬されるタイプ、一定期間は個別の骨壺ごとに安置され、その後に合葬されるタイプ、永久的に個人、夫婦単位のお墓として供養されるタイプなどに分かれています。
  この永代供養墓の管理は民営や寺院墓地、市民団体などですが、平成10年に東京の小平霊園で共同型合葬墓が完成し、遺骨がなくても生前に申し込める制度を採用するなど、公営墓地でも検討されているようです。しかし、まだ試み段階の永代供養墓ですから、法律や規制がないのが現状。跡継ぎがいない、先祖代々のお墓には入りたくないなどと永代供養墓を希望する場合は、契約内容や条件を十分に確認するなど、選択は慎重にしたいものです。
 
 お墓を供養する承継者が途絶えたり、不明になった場合は無縁墓になってしまいます。無縁墓と認定されたお墓の遺骨は納骨室から取り出され、墓地内にある慰霊碑や供養塔などに改葬されて供養されます。この場合、墓地の使用権は消滅します。法律による無縁墓の認定には、次のような手順が行われます。
 実際には、各地の墓地や霊園がそれぞれの定義を決めて、無縁墓を設定しているようです。
 
長い期間、お参りされていないお墓に、持ち主や縁故者を捜す札がかけられる。
連絡がない場合は、墓地の使用者や埋葬されている故人の本籍地、住所の市町村に対して縁故者の有無を確認する。
縁故者が確認できないときは、墓地の縁故者を捜す公告を2種類以上の全国紙に3回以上掲載する。
最後の公告から2ヶ月以内に申し出がない場合は、承継者がいないとみなされ、無縁墓と認定される。